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2006年9月17日 (日)

藤沢周平著『本所しぐれ町物語』

シェアブログbookに投稿
読み終えたのは大分前なんですけどね…。個人的にも思い入れの深い藤沢作品のひとつです。

作品の舞台は、江戸本所の「しぐれ町」。実際には存在しない架空の町です。
そこには様々な人々が住み、日々を過ごしていて。そんなそれぞれの様を町内ぐるりと巡る様な流れある筆致で描いている、連作短編集です。

この短編集、個々を取り出してみれば、主役は「人」。どこから読んでもそれぞれ話としては完結します。毎回コンスタントに顔を見せるのは大家の清兵衛さんと書き役の万平さん位で、後はどの話でも中心人物は様々。
しかしその中で、少しだけ後を引っ張る事柄があって。些細な噂話やご近所との会話といった、個々の作品内では直接関わらない「彩り」な部分である事柄が、次やその次の作品では主軸として扱われていたりします。それらが積み重なって繋がっていく内…目の前に、町としての「風景」が広がっていくんですね。

道行く町内の人々は皆顔見知り、けれどそう深く立ち入る間柄という訳ではない…。「ご近所さん」としての挨拶を交わし、そのまますれ違う人々。
互いの胸にはそれぞれ抱える事情があり、悩みがあり、想いがあります。しかし互いにその事に触れたり関わったりはしないまま、季節は流れ…人々の「営み」は続いていきます。
大抵の場面で顔を出す清兵衛さんも、あくまで「大家」として人々から助力を求められての接触であって。彼の目線による描写が中心ではあるものの、彼が「全体」の中心である訳ではないんですね。中心は何気ないご近所同士の会話の「連鎖」、そしてそこから紡ぎ出される町の「風景」。
…そう、それぞれの話の主役は「人」、でも全体通して読み終えた後…独立した「人」の物語が織りなす、「町」が主役になるのです。

この人と人が行き交う瞬間に描写の中心が入れ替わる…という展開の仕方が、非常に巧みだと感じますね。繋がっていない様で何処かで関わっている、「風景」の中の「人々」の描き方に自然な立体感があります。
中には連載作品の様に少しずつ状況が展開していく事柄もあって。読んでいる側としても動向が気になりますし、又その進展に伴い作中の「ご近所さん」達の視線が変化していくのも、「生きている」町の雰囲気が感じ取れて印象深いですね。
俯瞰的に眺めても、場面をひとつ切り取っても、そこには常に「物語」が存在する作品でした。

作品のテイストとしては、藤沢作品らしく全体にじわっと湿り気漂う雰囲気が表れています。けれどその合間に感じられる穏やかな温もりが…醸し出すギャップとも相俟って、非常に味わい深いものになってますね。
暮らしの何処かに潜んでいる暗い世界。その影が時折人々の生活にちらついたりしつつも…尚一筋の光を感じさせる、あたたかな余韻。このほんのりした情景に出会えると、ああこの瞬間が人生でいう「幸福」なのかな…と、じんわり染み入るものを感じます。
生きていく事って凄く辛いのですけど。ですけど、もしかしたら、そこに暖かさがあるからそれでも生きていけるのかもしれません。
移ろいゆく季節を感じ乍ら最後に清兵衛さんが胸に抱いた想いが、そんな暖かな部分をとても的確に表現してくれていて。いつまでも心に残る言葉でした。

藤沢周平は侍ものもとても好きなのですけど、こういう市井小説が非常に好みですねー。さりげない言い回しにはっとさせられ、魅せられますよ。
特に後期になるにつれ、じっとりした中にもいくらかの救いが見出せる作風が増えてくるので。その静かな人情描写がたまらないです。
 
 
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