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2006年9月 3日 (日)

坂東眞砂子著『善魂宿』

シェアブログ1152に投稿
坂東眞砂子と言えば、一寸前に子猫のコラム?で物議を醸しましたよね。かなり強烈な話で…うぅん出来るだけ刺激の少ない人生を送りたいと望んでいる甘チャンな私には、些か心情を量りかねる内容でありました;
その流れに乗っかる…訳でもなかったのですが只単に放ったらかしにしていた記事ネタをコレで思い出したもので(笑)。前に読んだ彼女の著作『善魂宿』について、少し語ってみたいと思います。…多分4月頃読んだ本だ(汗)。

主人公は山奥にひっそり暮らす母子。ここには時折、山道で道を間違えた人々が案内を求めてふらりとやってきます。そこで心ばかりのもてなしをした際、旅人が語るそれぞれの人生、思い出…悲喜こもごものそれら様々な物語を描き乍ら、母子の心情の機微に触れる連作短編集です。

…っと銘打たれましたら、そりゃあ母子と旅人の一期一会なあったか交流話を思い浮かべやしませんかね!?(迫)…知らなかったんです、私、坂東眞砂子というホラー作家の事を……(沈)。

旅人が語る思い出話というのは、なかなか結構強烈です。目の前で遭遇した生と死の現場や、甘美で官能的な倒錯の性の世界…まぁ大体がこっちの路線なんですが(笑)、どれも凄くのっしりした、ウェットな重みが伝わるんですね…。
どの話に出てくる人々も、自らの「生」を鬼気迫る勢いで貪っている感じ。だから目を逸らせぬ奇妙な引力があって、それが時に恐ろしく、重い。
こうも本能的な人間の描写をされると、その迫力たるや凄まじいものがありますね…。寒気がする位人が壮絶に「生きる」様を見せつけられます。
死の瞬間ですら、その人が「死ぬ迄生きていた」事を遺す様な筆致に只、息を呑むばかりでした。

はじめは単発的だった個々の物語、終盤それは母子に関わる過去話へ向かう様相を呈していきます。そしてそれは母の物語へと…。
まだ母が幼かった頃、今の場所は一族達が群を成して共に暮らす大きな「家」であって。長きに渡り集団の中での「和」の生活を疑いもしなかった人々が一人、またひとりと「個」に目覚め、群れを捨てて山を下りる様…。各話の中で断片的に語られていたこの「家」の過去を、母が静かに紡ぐ様子が何とも物悲しかったです…。
あんなに絶えて止まなかった笑い声も、もうない。多くの人に囲まれ日々を営む事は、もうない。
自分の名を呼ぶ人々も、もういない…。母の傍にいるのは彼女を「母」と呼ぶ子供だけになり、彼女の「名」がこの空気中に吐き出される事がなくなったのだと感じた瞬間…心の空洞を感じる様な、しんとした哀愁が伝わってきましたねぇ。
子供の「名」に隠された意図に、彼女がここ迄「家」に居続けた事への多くの想いが込められている気がしました。最後の母子の会話は切ない…な。

冒頭に記された、「餅のなる樹」伝説の断片…改めて読み返すと、非常に深い言葉ですね。人間の欲望が、進化だけでなく大きな破壊も招く暗示が…ぐっさり刺さります。
この作品、作中にはっきりした時代設定は表れないのですが、維新志士の話を生き証人として語る老爺が登場する所を見るとまだ明治かそこらか…の頃だと思うのです。その頃既に山奥で「過疎化現象」が起こっていた事への描写…うっすらモデルがあるという話しか知らないのですが、深刻な悲劇は随分早くから密かに生まれていたんですね…。
正に「餅のなる樹」の逸話が物語る展開。人の欲望が「不自由のない」から「自由な」だけの物を得る事を欲した時、その世界に変化と歪みが生じるんでしょうね…。
西欧にも古くから戒めとして伝わる「アダムとイヴ」の話がありますが。限りなくも抗い難い欲望に対する恐れというのは、いつの世も変わらないのでしょうか。
現在では更に拍車のかかっている過疎という社会問題、残った人側の視点で見た事で改めて憂いがこみ上げてきました。
 
……只ねぇ、母と兄の話は…いくら何でも、とノーマリーな私は悪寒が走りましたが(汗)。しかし昨今巻き起こった著者絡み騒動の顛末を見ていますと、嗚呼…妙な得心が(笑)。ま…こういう人生観の人だったん、だな…。
 
恐がりな私には少々刺激の強い作品でしたが。奥行きは大分深いので、生臭い人間描写が平気でしたら一読の価値はあると思いますよ。
因みに私、コレ読んで同作者の『山姥』に興味持ち始めてたりしてます(懲りてねぇ)
 
 
 
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