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2006年10月15日 (日)

田中啓文著『ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺』

シェアブログbookに投稿
この第1弾、8月に出た第2弾と、一気に読ませて貰いました!!スカッと痛快な落語小説です~。
ミステリ要素もありますが、割と青春成長話の色合いが強いかな。
 
 
作品は、7つの短編で構成されている連作シリーズ。主に新米内弟子・竜二の描写を中心に展開していきます。
本作の主人公であるこの竜二、何と頭はド金髪、で「鶏冠頭」と皆に言われる派手な髪型…およそ落語家らしからぬ風貌をしております。それもその筈(?)、彼は所謂「元ヤン」、教師も警察も手を焼く問題児だったんですねー。
 
 
そんな彼の根性入れ直す為、これ又骨太な元担任が…昔落語家を目指した頃弟子入りしていた師匠の所へ、竜二を引っ張っていきます。名は「笑酔亭梅寿」、今や上方落語会ではかなり名の知れた大御所噺家だそうで。
…が、この師匠…酒乱と暴力がハンパでない。突然チンピラスタイルの小童を弟子に、と頭を下げにきた元弟子に対し、「アホぬかせ」とその場で殴る蹴るに道具も用いての暴行…。その様は絶賛不良中の竜二をして息を呑ませる程の、壮絶なものでありました…。
 
そんな破天荒師匠でも流石は大御所らしく、弟子として取るだけの見込みがあるか、竜二に一席打たせてみます。昔弟子だった元担任に噺をさせ、それを元にその場で同じ噺をさせる…弟子入り前の初心者には随分ハードルの高い試験です…。
ましてやグレるのに忙しかった竜二が当然落語に通じている訳もなく、元担任が打った噺を見様見真似で喋るのが精一杯…だったのですが。どうやらスジは良いと認められたらしく、師匠の無言が合格の証。こうして落語若葉マークな竜二の、どたばた内弟子ライフが始まるのでした…。
 
 
冒頭の師匠による元担任への暴力シーンは…結構エグい感がありましたかね。特にヌルめの時代小説ばかり読んでいた私には…あんまりにも理不尽なハードさに、一瞬本を置こうかという思いが頭をよぎりもしました(笑)。
終始このノリでいかれたらどうしようかなー、と気にしてたのですけど。酷かったのは最初だけで、その後は次々出てくる魅力あるキャラクター達に、ぐいぐい引っ張り込まれていきましたよー。
 
 
各話は「謎解噺」と銘打たれているだけに、一寸したミステリ仕立てになっていて。更にタイトルにはそれぞれ上方古典落語の題目が使われていて、毎回何処かしらでその噺の中身とリンクしている作りになっています。
この落語との絡ませ方が、実に巧い!!噺自体を知らなくても作中でちゃんと概要が掴める様になってますし、そのネタと本編との噛み合わせも、さりげなくおいしい部分で使われていてニヤリとさせられましたね~。
ユーモアと人情を上手く取り混ぜた、痛快な面白さが感じられる作品だと思います。
 
ミステリの方は、数々の謎がひとつの発想の転換でぱあっと開ける様に解けていくという…正に「謎解き」スタイルの、とんち仕掛けな構成が中心。推理というよりなぞなぞの感覚に近そうですね。
これら解決の糸口をポンと閃くのが…あの元ヤン内弟子の竜二。結構細かい所に気の付く彼は、誰もが見落としていた事件の核心を掴むのにも非常に長けているんです。タイトルにもある師匠の「笑酔亭梅寿」の方も謎解きにはチャレンジしてますが、こちらのヤマは大抵外れます(笑)。
しかし竜二には意外と気の利く所があって、師匠を差し置いてぺらぺらと真相を喋る事はしないんですね。それとなく師匠の方を誘導し、さも師匠の考えを自分が代弁しているかの様に仕立てる…結果感嘆の声が向けられる師匠が悪びれずに気を良くしている滑稽さは、古典的乍らもやっぱり愉快で面白いです。
短い話の中でもなかなかに唸らせる「謎解き」と、それに関わる人々の「人情」が同時にバランス良く盛り込まれているのが、実に良く出来てるなぁと感じますねー。
 
 
そういったまとまりの良い構成も去る事乍ら。本作の魅力は、やはり若き竜二の人間的成長を瑞々しく描いている点も大きいと思います。


主人公の竜二、彼はこの間迄バンドで一旗揚げんと意気込んでいた奴だったので、落語や何やの伝統芸にはとことん疎いのです。

  
『あのなあ……私ら上方の噺家の大先輩やで。ちょっとは勉強しとき。芸のためなら女房も泣かす……ゆう歌、知らんか?』
『ロックしか聴きませんから』
 
 
…こういう奴が、落語家の弟子になろうってんですから(笑)。周囲の反応は実に様々。
 
露骨に眉をひそめているのが、竜二のすぐ上に当たる兄弟子の梅雨。大学の落研から噺の道で身を立てていこうと真剣に打ち込む彼にとって、どれだけ才があるかは知らんがチャラチャラした身なりのまま弟子で居続ける竜二の存在は…目障りでしょうがない。何かと竜二に突っかかる姿勢を見せます。
一方で捨てる神あれば、拾う神あり。姉弟子の梅春ら、竜二の無知さの中にも光るものを感じ取っている人達もいて…時折厳しく接しつつ、その才能がモノになる様常に気をかけてくれています。
更には師匠である梅寿の妻・アーちゃんや、駆け出しピン芸人で竜二と同世代のチカコ…公私共に様々な関わり方をする人々との接触を通して、竜二は噺家として、人間として着実に一歩ずつ歩みを進めていくのですね。
 
 
その過程で竜二が見せる、青年特有の悩みや葛藤…生き生きと夢を追う同世代の仲間達を見て焦りを感じたり、華々しくて目新しい世界に心が揺らいだり。この青臭さがとっても眩しいです。
最初は成り行きで足を踏み入れた落語の世界でしたが、師匠の噺を聴いて瞬時にその虜となり…いつの間にか頭の中は落語で一杯になっていく。他の若手達の様に根っこの張った大きな夢を抱く迄はいかなくても、目の前の目標にがむしゃらにぶつかって、時にはね返されて、落ち込むけれども又挑む…。若さだけが為せるもどかしくも貴重な経験を、竜二が文字通り体当たりで培っていく様は、見ていて辛くなる時もあるけれどすがすがしい爽やかさを感じますね。
 
そして陰乍らそんな竜二をちゃんと見ている、師匠の存在もあたたかいです。口も手も荒っぽい師匠だけに、そこから滲み出ている気遣いには心底からの優しさが伝わりますね。
まぁそんな生易しい表現では余りある普段の振舞いですけど…(笑)。
好きだったのが、「子は鎹」で見せた師匠と竜二の絆です!!素直にならずに散々手を焼かされた竜二に対し、『どんな弟子も、わしにとってはわしの子や』と無骨に言い切った師匠。目を合わせずに言ったテレ屋な一面も併せて、親子の様な2人の師弟関係に胸がほんわかあたたかくなりました~。
 
 
さて。これら賑やかな人間関係の中で、密かに気になっているのが…竜二と同い年のピン芸人・チカコとの微妙な距離感です。
あからさまに先へと発展する関係ではないものの、結構大事な場面でチカコの存在が竜二にとって重要であったりもして…この以上未満な間をうろうろしている両者の関係がたまらないですね☆
今の所は「親友」の色の方が強いみたいですが、その気になればするするっと進んじゃう可能性も!?今後に注目したいですー。
 
 
現在は第2弾迄出ているこのシリーズ。キャラ達の魅力も相俟って、これからも追っかけていきたい作品です!!
第2弾の方の感想は近々アップ予定です♪
 
 
時に。この本読んでいて、無性~に落語聞きたくなっちゃったのですけど!!…我が家には上方落語の音源がありませんでした(涙)。
ならばってんで、古今亭志ん生師匠の「井戸の茶碗」がCDであったので観賞~。笑わせて貰ったです…!!
感想記事も書いちゃいました。こちらからー。


同じ作品の感想記事を書いてらっしゃるブログ様:
「まったり読書日記」/エビノート様
「読書とジャンプ」/むらきかずは様
 
 
※記事内の『』部は、田中啓文著『ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺』/集英社文庫より抜粋しました。
 
田中啓文著『ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺』 書籍情報はこちら→アマゾン bk1

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コメント

なるとさん
こんばんは!
TBありがとうございました。
詳細なレビューで、忘れかけていた内容をすっかり思い出しました(^o^)/
竜二の成長と、師匠の弟子に対する愛情の深さを感じられて、とっても好きなシリーズです。
そうそう、チカコとの微妙な距離感も確かに気になりますね~

こんにちは♪
>冒頭の師匠による元担任への暴力シーンは…結構エグい感がありましたかね
同感です!
私も、ここを読んで、アレ?失敗しちゃった?とか思いましたもん。
でも、他の感想サイトさまの素敵レビューを信じて良かった!(笑)
もう、第2弾も読まれてるんですね。う、羨ましい~!(図書館が近くにないので、文庫待ちなのです。いつになることやら……)

エビノート様

こんばんは☆
コメント有難うございます~。

竜二と師匠の深い絆で結ばれた師弟関係、本当見ていて微笑ましいですよね~。
心の底ではちゃんと互いを気遣っている様子が伝わってきて、大好きな関係です♪
チカコとの関係も気になるのですが、こちらの歩みはどうですかね~?結構甲斐性なさそうなんで竜二(酷)。

それでは。又素敵感想を拝見しに伺います!!

かずは様

どうもこんばんは~。
コメント有難うございます!!

出だしの暴力シーン…
>アレ?失敗しちゃった?とか思いましたもん。
全くその通りです!!(笑)同じ気持ちだった方がいらっしゃると知って、少しホッとしました(^^;)
でも、頑張って読み進めて本当良かったですよね~☆あんな素敵な世界が広がっていたなんて…。

第2弾の単行本は…買っちゃいました(はぁと)。私も図書館等の施設には恵まれてない環境なもんで…。
…もしも機会がありましたら…是非是非読んでみて下さいませ!!前作より更に絆の深まった竜二と師匠に出会えますよ~。
心なしか、師匠の攻撃をかわす竜二の動きが前より機敏になってる気がします(笑)。

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