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2006年12月19日 (火)

藤沢周平「檻」シリーズ

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このシリーズの初巻を買ったのは、だいぶ前。その後暫く頁をめくることなく放置してました。他に気になる本があった、というのも多分にあったのですが、藤沢作品は読み出したら止まらなくなるぞ、という予感がしてたのですよね。
…そしてその通りになりました(爆)。
 
全話短編からなる連作型のシリーズ。なのもあってか1週間足らずで全4巻、一気に読み終えちゃったです!!
随所に藤沢作品らしい情緒が漂う良作でした〜。
 
 
主人公は、立花登という青年医師。彼の叔父は江戸で開業医を営んでおり、故郷でその話を聞く度に医師という道と華やかたりし江戸の街への憧憬を募らせていった彼は…やがて医学を志す者となり、単身叔父の住む江戸へ上京する決意を固めます。
が、待っていたのは思い描いていた理想とは似ても似つかぬ…生活。胸奮い立つ様な命の尊さを実感出来る瞬間など滅多になく、そこそこ腕は達者乍らも飲んだくれの叔父は向学心に薄く、しかもそこにつけ込まれる形で叔母とひとり娘(登にとっては従妹)の尻に敷かれている…。登が長年抱いてきた溢れんばかりの希望は次々に世知辛い現実に姿を変え、小さくない幻滅を覚えるのです。
 
そんな彼が叔父の代わりに勤め始めた、小伝馬町の牢医者の仕事。
牢の中で出会う様々な出来事や出逢いを描き乍ら…少しずつ、登自身の人間的成長にも触れていく展開になってます。
 
 
短編連作型のこのシリーズ。各話の基本は、事件めいた事柄に牢医登が首を突っ込んでいく内、結構本格的に巻き込まれて…という流れです。
主人公は医者ですが、描写の中心はその職業的方面とは違って。寧ろ藤沢作品らしい、しっとりした人間模様が光る作風になってますね。
牢屋に入る様な人々は、やはり胸の中に一癖も二癖もある「想い」を抱えているもので。複雑なもの、屈折したもの、一途なもの…それらを独特の湿度を伴って織り成す藤沢節は見事です。
 
それからその囚人独特の鬱屈した空気感、そこに登が持つ青臭い若さが触れ合って、更に味わい深い雰囲気を醸し出している気がしますね。
医学一筋に打ち込んできた若き登にとって、彼ら獄中の者達の住む世界とは…こんな仕事にでも就かない限り、まず関わる機会はないのですよ。そんなかけ離れた世界なのに…登は彼らのその薄暗い世界に、「救い」をもたらしてやりたい衝動にいつも駆られるのです。
元来正義感が強い性分、というのも勿論あるでしょう。けれどそれとは別に、彼ら囚人達のいじらしい程に「人間」として生きようとする様…世間からはみ出し者扱いされているのに、世の人達よりもずっと「人間らしく」生きている様。その姿に、若さ故に持ち得る登の深い感受性が不思議な共鳴をしている様にも感じられます。
何処か余所の世界の出来事と切り捨てられない感覚。こんなに必死に生きてるんだから、その分報われなくっちゃおかしいじゃないか、というもどかしさ──。青年の澄んだ、時に潔癖な目線から見つめた世の哀楽が、実に趣ある筆致で描かれていますね。
 
 
又囚人達の側も、登の無垢な青さを前に…それぞれの「想い」を、彼の中に投影している気がします。
かつての自分や想い人に思いを馳せたり。只、その瑞々しい輝きが眩しくてたまらなかったり。
多かれ少なかれ道を踏み外してしまった人々が、穢れなき青年に向けるそれぞれの「想い」…。ここから漂う哀愁も又興味深いですね。
 
 
後このシリーズの見所は、登と周囲の仲間達を含めた成長模様でしょうね〜。
親友の新谷、従妹のおちえ、彼女の遊び仲間おあき…。登と同年代の彼らも又、壁にぶつかったり、堕ちる所まで堕ちてみたり…若者らしい悩みや葛藤を抱え乍ら、懸命に世の中を生きていこうとしています。
彼らの歩みは、ヒロインのおちえは別にして、全体の中で決して大きな比率を占めてはいません。あくまで脇キャラとしての登場が主体なのですが、しかし一寸ずつ、一寸ずつ描かれるその一歩一歩…終盤で非常に感慨深いものとなって伝わってきますね。
 
 
そこら辺の描写で、巧いなぁ〜と胸が詰まった表現が、以下の部分。
誰しもがきっと通り抜けるであろう一瞬を、実に的確に表していると思います。

どこか猥雑でそのくせうきうきと楽しかった日々。つぎつぎと立ち現れてくる悪に、精魂をつぎこんで対決したあのとき、このとき。
若さにまかせて過ぎてきた日々は終わって、ひとそれぞれの、もはや交ることも少ない道を歩む季節が来たのだ。

(藤沢周平著『人間の檻 獄医立花登手控え(四)』/文春文庫「別れゆく季節」より抜粋)

この瞬間を悟った時って…凄く寂しいの、ですけど。楽しかったあの頃を、後ろに置いていく事なんてしたくない…とも、思うのですけど。
…けれど思い起こす度に、胸の中がじんと熱くなるあの感覚。これだけは、先へ進んでいっても忘れずいられるのかなぁ、って。そう信じ乍ら、前へと進んでいきたいですねぇ。
とても共感出来る一文でした。
 
 
 
…かれこれ10月からあたためていたレビューでした(爆)。やっと書けたー。
今度は「隠し剣」シリーズに挑戦してみようと思いまっす。あの映画のブームが落ち着いた頃にでもね!!(超天邪鬼)

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