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2007年7月15日 (日)

町田康著『パンク侍、斬られて候』

これ又読み終えたのは大分前な小説です。
いつもの長文レビューの様な、「オススメ!!」「ハマった☆」という感情の湧き上がりとは少し違うのですが、結構強い印象を残す作品だったので少々語ってみたいなぁ、と。
 
 
きっかけは本屋をぷらぷらしている折、例によって目についた本でして。結構タイトルの奇抜さに気持ちを惹かれるものがあったりした訳です。
ですんで、まぁそれなりの心構えでもって臨んだつもりだったのですが…。
 
 
…冒頭の雰囲気は、それ程妙でもなかったんですよね。
舞台設定はおそらく一応江戸時代。のどの辺りかって迄は明確じゃありませんが、武家社会の封建制度がまだ受け入れられている頃で、しかしそれなりに長い事この形で機能してきただけに緊張感の類は薄れつつある頃。ここらをベースに少々の架空設定が加えられたって所でしょうか。
まぁ多少句点の打ち方が間隔あり過ぎたり、かと思えばやけにぶつ切りになったりとか。いやに人を食った様なダルいオーラが漂ってるなぁ、程度の印象は受けましたが、普段読んでる時代作家とは雰囲気違って当たり前だろなー位に捉えておりました。
てな感じでとんとんとんと読み進めていく内……。

『戦場のところどころに柱が立っていて、その先端にはスピーカーが設置されており、「イマジン」が流れている。やがて正気に返った侍達は敵と目があうや、じきに目を伏せ、気絶した者どうし、照れくさそうに頭をかく。そして今度目があったときはもう仲間だ。ふたりの若者は美しい笑顔で笑う。そこへガンジャがまわってきてみなで一服をしていると、丘の上、あほらしくなって城に帰った御大将が陣取っていたあたりにいつの間にか特設ステージができていて、ボブ・マーリィ&ウェイラーズが演奏を始める。「ワンラブ、ワンハート、レッツゲットギャザーザアンフィールオーライ…』

ぱたっ(思わず本を閉じた音)。
何これ。
 
 
 
 
……タイトルからして、ふつーの時代小説とは一線を画しているのを重々承知しておりましたが……。
こうきたか、って感じでしたね。
 
 
 
しかしまぁ、私の読書に於けるポリシー(なんて高尚なものでもなく性分に近い)からして、「とりあえず心底読む気が失せる迄は読み続けよう」と思い直し。再び頁をめくり始めました。
 
したらばあらら、意外とすんなり読めちゃいましたねー。
 
 
多分コレ、単に奇をてらっただけの作風だったならきっと途中で興を殺がれたと思います。
それでもこの偏屈な私をして(爆)最後迄読ませ切ったというのは。無茶苦茶な設定や展開と、鼻につかない程度のリアリティのバランスが絶妙だったと言えそうな気がしますね。
 
 
話の起こりは、新興宗教「腹ふり党」がのさばる事で藩に与える脅威、が主人公・掛十之進によって声高に語られ。それに立ち向かうと見せかけて、それぞれが胸に抱く思惑や策略…を、全体的にだるだるした雰囲気を纏ったまま展開していきます。
皆がなぁんとなく事なかれ主義、面倒な事は別の誰かに押しつけよう…といった半端な要領の良さを持っていて。若しくは、大変な事になるかもしれんけど何か自分だけは大丈夫な気がするんだよね、といった"根拠のない"楽観主義者であったりするんですね。
そうやってこそこそ問題を棚上げ・たらい回しにしていく内、深刻な危機的状況に直面せざるをえなくなるという…。そんなのっぴきならない事態において、無様な迄に本性を見せる人物達の姿は自業自得と嗤える様でもあり、自分自身の汚い部分を目の当たりにした様でぞっとしたりもします。
 
 
歴史・時代作品を語る上で「現代社会と重なる部分がある」という表現を用いるのは、個人的に実はあまり好きではありません(あくまでも個人的な、自分が語る上で、という点ですが)。
時代が違えど価値観が異なれど、結局の所は同じ「人間」が築いてきている歴史ですので。生じる問題や課題なんかが今と似通っていても、さもありなんと思われるんですよね。勿論それに対する考え方や解決法は違ったりもするのですけど。
…その事を踏まえた上でも、敢えてこの作品には「現代社会と通じる部分があって興味深い」という表現を用いさせて頂きたい……というか、もうあからさまに現代人の発想を登場人物に当てはめているのがいっそ清々しいんです(爆)。
 
 
例えば、十之進の見事な太刀捌きと彼に吹き込まれた危機的情報に顔色を変えた侍が、上役宅を訪れ彼を推挙する場面。
又引用が長くなってしまうんですが、

『「で? その掛十之進という者はいかなる素性の者じゃ」
「は。素性はしかと知れませぬが相当の人物と見ました」
「うむ。相当の人物。大したものだ。最近ではもうそこいら中に相当の人物が溢れている。みんな一廉のものだ。家中は相当の人物で溢れておる。相当の人物しかいないといっても過言ではない。しかしこれは実は困ったものでなあ。相当の人物は相当偉いから相当の仕事を与えねばならぬ。ところが家中の御役には相当の仕事というのはない。どれもこれも取るに足らぬくだらぬ仕事ばかりだ。というかそういうくだらない仕事が集まって実に大変な仕事になっているのだが家中の相当な人物どもはこれに気がつかない。…(略)僕には武士のプライドがありますからそんなことはできません、などと吐かしおって、しかもその顔つきを見ていると、そういうことを出頭家老に向かって言うヒロイックなボク、に酔っているような様子で実にもう大した人物だ。…(略)しかし組織というものは不可解なものでそういうアホが責任ある地位についてしまうこともままある。ところがアホは組織の間違いによってではなく自分が偉いから責任ある地位につけたのだと思いこむ。これは様々の混乱を招く。アホはアホなので儂の指示を理解できない。理解できないのなら聞きに来ればよいのだがアホは自分が賢いと思っているから聞きに来ない。で、どうするかというと自分勝手な間違った解釈で仕事を進める。…(略)「偉いオレ」に固執するあまり間違ったプランをそのまま進行してしまう。…(以下略)」』

これなんてもう、現代社会のそれなり以上の地位にいる会社の管理職さんそのものじゃないですかー!!(笑)連想させるとか照らし合わせるとかいう次元じゃなく、もうまんまですよ。

でねぇ。これだけ露骨な現代目線で弁を振るわれると、当然の如く心情が手に取る様に分かるんですね。中身も結構赤裸々なもんだから、余計気持ちも入り易い。
会社の中間管理職丸出しの出頭家老・内藤帯刀、絵に描いた様な凡庸サラリーマンの一藩士・長岡主馬、そして主人公は脳内思考フリーターの浪人・掛十之進。現代人きどりの振舞いを見せる彼ら登場人物ですが、それなりに時代作品を期待して読み始めたにも拘わらずぐんぐん引き込まれてしまうんです。
んー上手く表現出来ないんですが、彼らのぐだぐだ感が全体の緩い空気感とうまい事フィットしているんですよねぇ。それでいて変に武士っぽくカタい所はあって、江戸侍の大真面目さから生まれる滑稽さも残っている。
只時代物を今風に仕立てたら面白いだろ、みたいな安っぽさではなく、荒唐無稽な話を堂々あっけらかんとやってみせる辺りに、最後迄引っ張り込ませた勝因(?)があった様に思えました。
 
 
後密かにほくそ笑ませて貰ったのが、時折顔を見せる色合いの違った風刺表現です。

『剣術ができる奴というのは自分しかないというか、自分をいったん離れて物事を考えることができない困った連中でね、例えば滅茶苦茶なこと、例えば金子百両を拝借したい、なんてなことを平気な顔をして頼んでくる』
『女が去った後、不思議な、屁のような香りが立ちこめていた。』

や、どうも、所謂「王道的剣豪作品イメージに対するアンチテーゼ」みたいな匂いも漂ってきまして。こういった辺りからも、それなりの覚悟を持って開き直って書いてんだなーというのが(!?)伝わってくる様な感じもしました。
 
 
 
こんな感じで、全体の雰囲気は相当にゆるゆるですー。
例えるならば、週刊少年ジャンプの『銀魂』という漫画、アレの雰囲気が楽しめる(又は許せる)方なら結構楽しめるかと思いますね。まぁ『パンク侍』の方が数段シュールだと思いますけど。
毛色の変わった作品に触れてみたくなった方、ひたすら愉快でトリッキーな世界に浸かってみたくなった方。ひと夏のアバンチュール(!??)に如何でしょうか。
 
 
 
それにしても、今回はやたら引用部ばかりで申し訳ないです。
独特な作品故、つい原文の個性に頼ってしまって…うう、自分の表現力不足を痛感した思いです。;
こういう時に、己の真の実力を思い知らされるんですねぇ。
 
 
 
※記事内の『』部は、町田康著『パンク侍、斬られて候』/角川文庫より抜粋しました。
 
町田康著『パンク侍、斬られて候』 書籍情報はこちら→アマゾン bk1

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